竹野はる / Sunny ✎Webライター✎

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介護職の人間関係は複雑?人間関係を良好に保つ方法と耐えられなくなった場合の対処法



「介護職に興味はあるけれど、人間関係が悪いのは本当なのだろうか」

「介護職で人間関係に悩んだら、どうすればいいのか」

 

現在の日本は超高齢社会です。それに伴って介護職の需要はますます高まりをみせ、現在の介護職は安定産業ともいわれています。

 

しかし介護職はやりがいがある一方で、人間関係や人手不足・労働条件などさまざまな問題点を抱えている職業です。とりわけ介護職をとりまく人間関係は複雑で、多くの介護職が人間関係に悩まされています。

 

本記事では介護職をとりまく人間関係とその実態、そして対策について解説します。介護職を志したり、人間関係に悩んだりしている介護職の参考になれば幸いです。

 

参考:公益財団法人 長寿科学振興財団「健康長寿ネット」

日本の超高齢社会の特徴 | 健康長寿ネット

 

【目次】

 

介護職をとりまく人間関係の特徴と悩む理由

 

公益財団法人の介護労働安定センターが令和3年度に実施した介護労働実態調査によると、「職場の人間関係」を理由に退職した介護職は全体の18.8%にのぼります。これは離職理由の第1位でもあるのです。

 

離職率は低下傾向にあるものの、多くの介護職が人間関係で悩んでいるといえるでしょう。このように介護職をとりまく人間関係はさまざまです。どのような特徴のものがあるか、悩む理由とあわせて確認します。

 

参考:公益財団法人 介護労働安定センター「令和3年度「介護労働実態調査」結果の概要について」

http://www.kaigo-center.or.jp/report/pdf/2022r01_chousa_kekka_gaiyou_0822.pdf

 

介護職同士

現場の最前線で利用者を直接ケアする介護職。同じ介護職だからといって、分かりあえたり摩擦がなかったりなどあり得ません。年齢や経歴・先輩・後輩・資格の有無・介護に対する想いなど、人それぞれ異なります。

 

介護はひとりではなくチームで行うサービスです。価値観の違いから人間関係にほころびが生じやすい関係といえるでしょう。

 

また介護職は女性が7割から8割を占めており、女性が多い職場です。極端に職場に女性が多い場合は、派閥ができたり妬みや嫉みが渦巻いたりしやすいといえます。

 

参考:厚生労働省「介護労働の現状」

https://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-12602000-Seisakutoukatsukan-Sanjikanshitsu_Roudouseisakutantou/0000071241.pdf

 

介護職以外の職種や上下関係

介護職として働いていると、よく耳にする言葉に「多職種連携」があります。多職種連携は介護職がほかの専門職と連携し行う、利用者のケアを指す言葉です。看護師・リハビリ職・福祉用用具の事業者・ケアマネジャーなどとの連携がそれにあたります。

 

多職種同士はそれぞれの専門的な視点から、ディスカッションを行いケア方法を考えていくものです。しかし「看護師は上・介護職は下」など、あってはならない職種の序列がみられる場合もあるでしょう。

 

また上司や部下との関係も、仕事をするうえでは切っても切り離せません。「相談しているのに上司が取り合ってくれない」「上司と部下の板挟みになっている」などの悩みはよく聞かれます。

 

利用者 

利用者なくして介護職は成り立ちませんが、利用者と一言でいっても当然ながら色々な人がいます。こちらに非がある場合は真摯に受け止め対応する必要がありますが、なかには過剰な要望や暴言・暴力などのハラスメント行為を行う人がいるのも事実です。

 

いくら過剰だと分かっていても、相手はお客様なのだからと我慢してしまったり認知症だから仕方ないと考えたりして、自分だけで抱え込んでしまう介護職も少なくありません。

 

介護職は対人援助職で、心を使ってケアする面も多い職種です。抱え込んで精神疾患を患ってしまう場合も少なくありません。

 

参考:厚生労働省精神障害の労災補償状況」

https://www.mhlw.go.jp/content/11402000/000955417.pdf

 

利用者の家族

 

利用者本人はもちろんですが、その家族との関係で悩む場合も多いでしょう。

 

生きてきた時代背景から、家族の多くは自分が介護をしなければならないと感じています。しかしそれができないため、介護サービスを使わざるを得ないジレンマを、少なからず抱えているのです。

 

そのため介護職を、自分の分身や召使いかのように思っている家族も一定数います。ときには無理難題をいいつけ、思ったように介護をしないと苦情をいう人もいるでしょう。こうなれば大きな問題に発展し、心労がたたる可能性も充分に考えられます。

 

 

介護職を取り巻く人間関係を良好に保つ方法

 

人間関係が複雑だと思われやすい介護職ですが、悩む必要はません。介護職として良好な人間関係を保つためにできる行動は、たくさんあるのです。

 

ここでは介護職が、人間関係を良好に保つ方法を紹介します。良好な人間関係を築き、本来の介護職の楽しさややりがいにフォーカスできるようにしましょう。

 

派閥からは距離をとり、噂話には参加しない

 

派閥ができやすい環境の介護職の現場。それらと適度に距離を保つのが大切です。どこにも属さず、誰とでも分け隔てなく接すれば、おのずと周囲の信頼を得られるようになります。また自分の意見も、忖度せずに言えるでしょう。

 

また噂話や悪口は、尾びれや背びれを付けて広がっていくものです。その瞬間は楽しく話をしていても、思わぬ形で相手の耳に入る場合もあります。その結果、最悪の人間関係になり兼ねません。

 

「あなたもそう思うでしょ?」など意見を求められても、同意しないようにしましょう。話を合わせるだけでも、損をする可能性があります。「私は分からない」とさらりとかわすのがコツです。 

 

利用者やその家族の話は一旦受け止める

 

利用者やその家族にも、さまざまなタイプがいます。ときには自分と合わないと感じる相手もいるでしょう。

 

まず前提として、利用者やその家族は困っているから介護サービスを利用しているのを忘れてはなりません。過剰な要望や行為に至る過程に、こうなる原因があった可能性があります。それを分析したり聞き取ったりして、然るべき対応をする必要があるでしょう。

 

これは介護職だけではなくチームの問題です。上司に相談したりハブ機能であるケアマネジャーに相談したりして、対応しましょう。

 

自分が職場の環境を変える

 

職場の環境を変えるために、自分が立ち上がる方法があります。働き手同士の人間関係では、声を挙げた最初のうちは煙たがられる場合が多いでしょう。

 

しかし、あなたと同じように人間関係に辟易している人は、少なからずいるはずです。会議などの公の場で声をあげるのが変化の第一歩となります。

 

また利用者やその家族との人間関係では、スタッフをカスタマーハラスメントから守る仕組みを導入できるように働きかけるとよいでしょう。これは厚生労働省も推奨しています。

 

カスタマーハラスメントになる前の正当な意見も、自然と拾い上げられる仕組みがおすすめです。その仕組みがあれば、スタッフも気持ちよく働けます。

 

参考:厚生労働省「介護現場におけるハラスメント対策」

https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_05120.html

参考:マイナビ介護職へのご利用者のハラスメント対策をマニュアル化メグラスhttps://kaigoshoku.mynavi.jp/contents/kaigonomirailab/news/medicalnursingnews/20210519/

 

どうしても人間関係に耐えられなくなったら

 

さまざまな策を講じても、人間関係に耐えられなくなる場合もあります。そのときは絶対に無理をしないでください。

 

上司や同僚に相談したり、配置を変えてもらったり自分を守る行動を取りましょう。介護職の代わりはいますが、自分自身の代わりはいないのです。身体を壊しては元も子もないため、ときには休職や退職の選択肢も視野に入れておく必要もあります。

 

また組織内ではどうしようもないのなら、行政機関に相談するのもひとつの手段です。行政の介護保険課や労働基準監督署・地域の介護問題を引き受けている地域包括支援センターなどを活用しましょう。

 

参考:厚生労働省「地域包括ケアシステム」

https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/kaigo_koureisha/chiiki-houkatsu/

 

ケアマネジャー・介護福祉士資格保有の筆者が体験した介護現場の人間関係

 

長年介護の現場に携わっている筆者も、人間関係には苦労したものです。同僚や多職種間のいざこざや、利用者とのトラブルもそれなりに経験しています。そのなかで特に印象に残っているのが、過剰になついてきた同性のスタッフです。

 

悩みの相談という理由で長文のLINEを毎日のように送られたり、駅で待ち伏せされて弁当を差し入れされたりという内容です。当時の私は彼女を無下にもできず、ノイローゼになりました。今でもLINEが苦手なのは、そのせいかもしれません。

 

上司に相談しても「あなたを慕っている証拠」だと最初は相手にされませんでしたが、必死の訴えが届いたのか私に異動の辞令が出たのです。私の異動をきっかけにパタッと連絡が来なくなり、そのうち彼女は退職したと風の噂で聞きました。

 

今となっては笑い話ですが、当時は相当悩みました。私のようにノイローゼにならないように、早めに対応ができるようにしておきましょう。

 

まとめ

 

介護職は、専門職同士が連携しチームでケアをする対人援助職です。そのため介護職をとりまく人間関係は複雑な傾向にあり、人間関係に悩む介護職も少なくありません。

 

しかし本来の介護職は、やりがいのある楽しい仕事です。おかしな人間関係によって、その担い手を失わないよう、介護に携わる一人ひとりがチーム作りを意識する必要があります。

 

またどうしても耐えられない場合は、自分を守る行動を取りましょう。そこにこだわらなくても、あなたの実力が発揮できる介護の現場が必ずあるはずです。